きゃらめるescape

メシアを探して

聖なる夜のお話

街には青や白、赤や黄などのイルミネーションが光る。

恋人達が行き交う道に小さな子がいた。

一人は少女、もう一人は少年。

少女は五歳ほど。少年は四歳ほど。

「ここにもいない。ねえもういないんじゃないの?クルト。」

少年が少女ークルトにたずねた。

「・・・きっと忙しいんだよ。アレン」

クルトが少年ーアレンを慰めるようにいった。

「そうなのかな?・・・そうだといいな」

雪の降る街、暖かな街灯の下で手をつないでじっと二人はまっていた。

二人の前に恋人達が楽しそうに話している。

二人はなるべく それ を見ないようにして下を向いていた。

するとー

「どうしたの?お穣ちゃん、お坊ちゃん?」

女性の声が聞こえる。二人が顔をあげるとその女性と目があう。

そこには赤いリボン、赤い服の女性と赤い服をきた男性がたっていた。

「まってるんだよ!」

アレンがいう。

「誰をだい?」

男性がアレンの目線を合わせるためにかがむ。

「・・・。」

アレンは黙った。そして

「お姉さんとお兄さんはどうしてそんな格好しているの?」

アレンが聞く。

「・・・。」

女性と男性は顔を見合わせた。そして

「どうしてって私たちはサンタさんだからだよ。」

アレンとクルトは目を見開いた。

「ほんとに?」

「ああ。俺たちはサンタさんだ。」

二人は喜んだ。

二人が待っていた人はサンタさんだった。

「ねえサンタさん!サンタさんってなにかをプレゼントしてくれるんでしょう?」

「ええ。そうよ。そのために私たちはいるのだから。あなたたちは何が欲しいの?」

女性もクルトに目線を合わせるためにかがんだ。

「お母さんとお父さん。」

二人のサンタは驚いた。

「それは・・・なんでかしら?」

女性はたずねた。クルトは答えにくそうに目をそらす。

「・・・お母さんとお父さん急にいなくなっちゃった。クルトがおきたらいなかった。それでねおばちゃんとおじちゃんがいたんだよ。おかあさんたちは?って聞いたらご飯たべよっかって。教えてくれなかったの。」

「・・・。」

「クルトとアレンが欲しいものはお母さんとお父さん。消えちゃったお母さんとお父さん。」

黙って聞いていたサンタが口を開く。

「・・・それは無理だな。ごめんな。」

男性はアレンとクルトの頭をわしゃわしゃっとなでた。

「なんで?サンタさんは欲しい物をくれるんでしょう?」

「ええ。そうよ。でも・・・あげれないものだってあるの。」

二人の顔が曇る。

ムスっとするクルトとアレンを見てサンタさんはこういった。

 

「君たちのお母さんとお父さんはねお空にいるんだ。」

男性のサンタさんが目を開く。クルトとアレンは不思議そうに

「・・・お空?」

といった。

「そう・・・。お空の上で君たちを見守ってるんだよ。」

「・・・どうして?」

サンタさんはにこっと笑って

「きっと君たちのことが大好きだからだよ。」

 

「だったらなんでいなくなっちゃったの?」

「アレンとクルトのこと捨てちゃったの?」

悲しそうにサンタさんを見る。

「一緒にいたくてもいられないからだよ。絶対に君たちを捨ててない。きっといつか会えると思う。いつか・・・ね。」

女性のサンタさんのネックレスがキラっと反射して光る。

「・・・。」

二人は黙った。空を見上げる。

「・・・今も・・・みてるの?」

星がキラキラっと輝く。

「ええ。きっと・・・」

そういってサンタさんは微笑んだ。

「・・・私からのプレゼント。はいこれ」

女性のサンタさんはクルトに赤いリボンを渡した。

「君にはこれを。」

男性のサンタさんはアレンに手袋を渡した。

「リボンだ!お母さんのとおんなじ・・・!」

「手袋・・・!お父さんのと同じ!」

二人は嬉しそうに飛び跳ねた。

「・・・さ、もうお帰り。」

サンタさんが笑って二人の背中を優しくおす。

「また・・・サンタさんにあえるよね?」

「・・・」

微笑んだまま控えめにうなずいた。

「またいつか。」

手を振り合った。

 

 

二人が帰ったのを見届けた後サンタさんは少し会話をした。

「・・・元気そうでよかった。」

男性がつぶやく。

「ええ。でもまさか欲しいものがまさか ‘‘私たち‘‘ だなんてね。驚いた。」

女性ークルトの母親がそういった。

「ああ。・・・また会いたかったんだろうな。」

「嘘ついちゃったわね。もう会えないのに。何でかしら?またいつか会いたい・・・」

奇遇だな、と男性ークルトの父親がいった。

「・・・でもあの子たちの記憶のなかに私たちがいるってすごく素敵じゃない?」

「ああ。素敵だ。」

 

そうつぶやいたサンタさんたちは嬉しそうに微笑んだ。

 

もうその街頭の下には誰もいなかった。